2013年12月8日日曜日
失楽園考察 ~「ジョン・ミルトン論 『失楽園』と現代」から~
失楽園考察 ~「ジョン・ミルトン論 『失楽園』と現代」から~
始めに、私自身は当然名乗るほどの人間でもなければ、文学的素養もないただの物好きである。ただ、自身がミルトンの「失楽園」を読む前に批評書を読んで、それを整理し稚拙な考えを述べたものが何らかの役に立てば幸いである。役に立たないと思うから、こんな一文添えるんだけど
また、所々軽率な発言が散見されるとは思いますが、特定の団体および個人を中傷する意図はありません。こんなんで抹消されたらたまったもんじゃない
日本においてジョン・ミルトンの「失楽園」は、文学もしくはサブカルチャーにおいての名称元を除いては知名度が高いとは言い難い。また、その登場人物の設定がどれほど受け継がれているかと言えば、これもまた忠実に下敷きにした作品も目にしたことない。
もっとも、私には「失楽園」を忠実に引用すべきだなどといった考えもなければ、「失楽園」自体、当時の文献・説話からオカルト話に至るまで下敷きにしたうえで彼自身の志向を加えて恣意的に描いたものである。悪魔や天使を描くならば「失楽園」に準じさせろ!なんて命令は誰にもできるわけがない。
でも大天使が三馬鹿じゃなくてベルゼブブが蠅じゃなくてモロクが中ボスじゃないのは見てみたいです・・・安西先生
詩が単なる詩人の関心や信念の排け口でないことはあらためて述べるまでもないが、ここに引用した批評には、本来峻別されるべき多くの事がらが混同されている。文学作品の均衡または統一の問題にとっては、作者の関心や信念の内容よりも、より特殊な事がら、例えば作者の技術、彼の用いる言葉の性格等のほうがはるかに重要である。『失楽園』にひそむある種の混乱あるいは矛盾はすべて、かような技術上の問題に原因するものであり、それはミルトンが『失楽園』を制作するにあたり、主として技術的な点に関してほとんど克服しがたい困難に直面していたという事実を示すものである。
(本書P.67)
本書中の英文日本語訳
yet not for those,
(だが、それのために、
Nor what the Potebt Victor in his rage
またはそのほかに、かの力ある勝利者が怒りにかられて
Can else inflict, do I repent or change,
揮い得る武器をおそれるあまり、私は悔いたりしない。
Though chang’d in outward lusture, that fixt mind
また、たとえ外なる輝きは変わっても、あのかたい心
And high disdain, from sense of injured merit,
傷ついた誇りから発する高い侮蔑を、変えはしない。
That with the mightiest rais’d me to contend,
これこそが、私を奮い立たせて全能者と競わせ、
And to the fierce contention brought along
その激しい戦闘に
Innumerable force of Spirits armd
数知れぬ武装せる精霊の軍勢を駆けつけさせたのだ。
That dust dislike his reign, and me prefering,
雄雄しくも彼の統治を厭い、私を選んだ彼らは、
His utmost power with adverse power oppos’d
天の野に疑わしき戦いを起こして、彼の至上の力に反逆の力でさからい、
In dubious Battel on the Plains of Heaven,
↑
And shook his throne.
その王座を揺り動かした。
(P.L.ⅰ,ⅱ.94-105)
but of this be sure,
ただし、これだけは心に銘じておくがよい。
To do aught good never will be out task,
およそ善なることをなすのはわれわれのつとめではなく、
But ever to do ill oue sole delight,
悪をなすことこそ、
As being the contrary to his high will
われらが逆らう者の高い意思に反するゆえに、
Whom we resist, If then his high Providence
われらのこの上なき喜びとするのだ。それゆえ、もし彼の摂理が
Out of our evil seek to bring forth good,
われらの悪より善を引き出そうとすれば、
Our Labour must be to pervert that end,
われらの努力はその目的を押し曲げて、
And out of good still to find means of evil;
善からつねに悪の手立てを見つけ出すことことでなければならぬ。
which oft times may succeed, so as perhaps
それは、もし私の思い違いでなければ、いくたびか首尾よく運んで、
Shall grieve him, if I fail not, and disturb
おそらくは彼を嘆かせ、
His inmost counsels from thir destind him.
そのもっとも深いはかりごとを、定められた目標から狂わせることになろう。
(P.L.ⅰ,ⅱ.158-68)
but he his wonted pride
だが、彼はいつもの自負をすぐに取り戻して、
Soon recollecting with high words, that bore
価値ありげには聞こえるが
Semblance of worth not substance, gently rais’d
中身のない高い言葉で、しずかに
Thir fainted courage, and dispelled thir fears.
彼らの萎えた勇気を奮い立たせ、恐れの念を吹き払った。
(P.L.ⅰ,ⅱ.527-30)
超適当解説
ミルトン「あ、やべ噛ませサタンageすぎた・・・・最後の三行で所詮中身はないとsageとこう。」
高揚してる読者「サタンかっけー、最後三行?どうでもいいし」
Toward the four winds four speedy Cerubim
四方に向かって、四人の足はやきケラブが
Put to their mouths the sounding Alchymie
高らかにひびく黄金の器を吹き鳴らし、
By Haralds voice explaind.
伝令の声によってそのわけが説明された。
(P.L.ⅱ,Ⅱ..516-8)
But rather to tell how, if Art could tell,
それよりもっと話して聞かせたいことがある、もし人の言葉でそれを語れるのならば。
How from that Saphire Fount the crisped Brooks,
あのサファイアの泉から、さざめく小川が
Rowling on Orient Pearls and sands of Gold,
東洋の真珠や黄金の砂の上をまろび、
With mazie error under pendant shades
かぶさる木蔭の下をめまぐるしくくねりつつ、
Ran Nector, visiting each plant, and fed
甘露のごとく流れ、すべての草木をおとずれて、
Flours worthy of Paradise.
楽園にふさわしい花々をはぐくんだ。
(P.L.ⅳ,Ⅱ.236-41)
They therefore as to right belongd,
彼らは、それゆえ、正しい道につくように
So were created, nor can justly accuse
創られたからには、
Thir maker, or thir making, or thir Fate;
彼らの創造主をも、創られたことをも、運命をも責めるのは不当である。
As if Predestination over-rul’d
あたかも運命の予定が、
Thir will,dispos’d by absolute Decree
わが絶対の意思が、
Or high foreknowledge ; they tehmselves decreed
あるいは高い予知に促されて、彼らの意思をしたかのように。
Thir own revolt, not I : if I foreknew,
彼らの謀反を決めたのは彼ら自身であって、私ではない。たとえ私が予知したとしても、
Foreknowledge had no influence on thir fault,
予知は彼らの罪に何の影響も与えなかった、
Which had no less prov’d certain unforeknown.
けだし、予知されなくても確かに犯されたであろう罪だったのだから。
So without least impulse of shadow of Fate,
それゆえに、いささかの教唆も、運命の影すらもなく、
Or aught by mee(my) immutablie(immutably) foreseen,
また私が先見によって動かしがたいと認めたいかなる状況もなしに、
They trespass, Authors to themselves in all
彼らは道を踏みたがえた、
Both what they judge and what they choose ; for so
判断することにも、選択することにも、すべて彼ら自身の造物主となって。なぜなら、
I formd them free, and free they must remain,
私は彼らをそのように自由な身につくったのだから、
Till they enthrall themselves.
彼らは、自ら奴隷となるまでは、当然自由のはずなのだ。
(P.L.ⅲ,Ⅱ.111-25)
()は勝手な現代語・非イギリス訛り、信頼性?知ったこっちゃない
一応辞書とにらめっこしてるから大丈夫じゃないかなぁ(適当
これは、全能の神の予見と人間の自由意志に関する教義であり、『失楽園』のかなり重要な部分を表している部分である。決して中二ワーズが多いからではない
ミルトンによって実現されたものは、正しい意味での思想の感覚化、すなわち思想が具体的な事物に置き換えられることによりわれわれの直接的経験の対象になっているのではなく、単なる抽象の置換、あるいは思想の情緒的叙述であるにすぎなかった。
要するに実感がないってことですかね。個人的には、監督者で先見というか知っていて(法律的には悪意で)放置してて、そんで罪とか罰とかのたまうって・・・あ、神様ってそんなもんですよねサーセン
with what eyes could we
なんのかんばせあって
Stand in his presence humble, and receive
畏れかしこみつつ彼の前に立ち、
Strict law imposed, to celebrate his throne
課されるきびしい掟を受け入れて、彼が
With warbled hymns, and to his Godhead sing
Forced Halleluias, while he lordly sits
Our envied sovran(sovereign), and his alter breathes
Ambrosial odours and ambrosial flowers,
Our sevile offerings?
いや高くわれらの君主として座し、その祭壇にわれらの卑しい捧げものである芳しい香と
芳しい花の匂う下で、賛歌を歌って彼の玉座をたたえ、その神柱のために心にもない
ハレルヤを歌うことを忍びたえようか。
This must be our task
天におけるわれらのつとめは
In Heaven, this our delight. How wearisome
ただこれだけ、これこそがわれらの歓び。
Eternity so spent in worship paid
↓
To whom we hate!
われらが憎んでやまない者にこうして礼拝を捧げてすごす永遠のなんと退屈至極なことか!
(P.L.ⅱ,Ⅱ.239-49)
ゴマすりが嫌になって、反乱に加わったマモンさんの図
侮辱を含んだ一方的な文言だけど、これを恩寵とする神も
これで反乱起こすマモンさんもこの生まれついての貧弱一般人にはピンと来ないね
This I my glory account,
あなたがいたく喜ばれて、
My exaltation, and my whole delight,
私においてあなたの御心が果たされたと宣べ給うたことは、私にとって大いなる栄光、
That thou in me, well pleased, declar’st thy(they) will
誇り、まったき喜びであると思います。あなたの御心を
Fulfilled, which to fulfill is my bliss.
果たすことこそ、私のこの上ない幸福なのですから。
Sceptre and power, thy giving, I assume,
あなたの賜る笏と力を、私は今この身に帯びますが、
And gladier shall resign when in the end
時至って、
Thou shalt be all in all, and I thee
あなたのご意向があまねく及び,
For ever, and in me all whom thou lov’st
とこしえに私があなたの中に、そしてあなたの愛し給うものが私の中に在るようになれば、
喜んでお返しいたしましょう。
But whom thou hat’st I hate, and can put on
しかし、あなたが憎む輩は、私もこれを憎み、
なにごとにもあなたのに姿である私のことゆえ、
Thy terrors, as I put thy mildness on,
あなたの柔和を着るように、あなたの猛々しさをまとうこともできましょうから、
Image of thee in all things : and shall soon,
ただちにあなたの御力に身を固めて、
Armed with thy might, rid Heaven of those rebelled.
この謀反の輩を天から駆逐いたしましょう。
(P.L.ⅳ,Ⅱ.726-37)
イメージしろ ではなく、神を讃えるキリストの言葉(ラファエル言)
武力行為は業務妨害しかしなかった奴がずいぶんと強気である、ホームだからか
本文にもとれば、両者共に詩的効果としては過不足ないが、
悪魔側が先に読まれるため、どうしても先入観として
神に専制的な印象を抱いてしまう。
実際そうじゃないか否かという議論は置いといて、
作者自身は敬虔な清教徒であり、如何にサタンやアダムを魅力的に描こうと、
最終的な正義は神にある。
芸術的に深く共鳴しながらも、
なおかつ同時に倫理的にその功罪を正しく感得するということ
ーわれわれに失われたものは、まさしくこの能力なのである。
(P.110)
そんな能力生まれつきない奴のほうが多いだろとかつっこんではいけない
もっとも感情に支配されてはその作品の真意を汲み取れない、
というのはもっともだとは思う。
「読むごとに表情を変える」という感想を聞くと、
そりゃあんたの心境が違うだけじゃないかと思うし。
また、先ほど文言に続き、『失楽園』は思想詩であるため個人の
感情に染まって共感してはならないとも言及されている。
あなたとは違うんです
the Earth
地は
Ahll all be Paradise, far happier place
すべて楽園となり、
Then this of Eden
このエデンの園よりもはるかに幸せなところとなるだろう
(P.L.ⅶ,Ⅱ.463-5)
天使マイケル様が教えてくださる人類の未来
いわゆるミカエルさんだけど、マイケルだと一気にしょぼく聞こえるのは私だけだろうか
やぁ、マイケル!
後台詞が利根川に聞こえる、「楽園となると言った・・・・・!言ったが・・・・・今回、
まだその時と場所の指定まではしていない(ry」
full of doubt I stand,
私はどう考えてよいかわかりません、
Whether I should repent me now of sin
私がもとで犯された罪を今
By me done and occasiond, or rejoyce(rejoice)
悔いるべきなのか、あるいは、
Much more, that much more good thereof shall spring.
それにもまして、いやまさる善がそこから湧き出ることを喜ぶべきなのか。
(P.L.ⅶ,Ⅱ.473-6)
How can I live without thee, how forgo
お前がいなくてはどうして生きられよう、どうして、
Thy sweet Converse and Love so dearly joind,
お前とのたのしい睦びと、かくも固く結ばれた愛を棄てて、
To live again in those wild Woods forlorn?
ふたたびこのわびしい森にただ一人住むことができようか。
Should God create another eve, and I
たとえ神がもう一人のイブを造りたまい、私が
Another Rib afford, yet loss of thee
私が胸の肋をもう一つさし出したところで、お前を失う
Would never from my heart ; no no, I feel
お前をうしなう寂しさは私の心から消えることはないだろう。否、否、
The link of Nature draw me : Fresh of Fresh,
自然のきずなが私を引き寄せるのを感じる。肉の肉、
Bone of Bone thou art, and from thy State
私の骨の骨なのだから、お前は。
Mine never shall be parted, bliss or woe.
幸福にしろ不幸にしろ、お前のありようから別れて生きることは断じてすまい。
(P.L.ⅸ,Ⅱ.908-16)
he scrupl’d not to eat
彼は、
Against his better knowledge, not deceiv’d,
よりすぐれたる知恵にそむいて、ためらうことなく食べた。
But fondly overcome with Female charm.
欺かれてではなく、おろかにも女の誘惑に打ち負かされた。
(P.L.ⅸ,Ⅱ.997-9)
性欲が食欲と睡眠欲に打ち勝った偉大な瞬間である
アダムの行為は、人間的にもっとも崇高な動機から発したものであると同時に、
神への愛をより卑しい愛のために裏切った許しがたい罪でもある。(P.134)
Thrones, Dominations, Princedomes, Vertues, Powers,
王者よ、支配者よ、君主よ、実力者よ、権力者よ、
If these magnefic Titles yet remain
もしこのようないかめしい名が今もなお
Not merely titular, since by Decree
ただの名目だけのものでないならば。と言うのは、天命によって
Another now hath(have) to himself ingross’t(engross)
もう一人の者がいま
All power, and us eclipst under the name
全権力を簒奪し、
Of King anointed, for whom all this haste
受膏の王なる名の下にわれらの光輝を汚蝕した。だからこそ、このように急いで
Of midnight march, and hurried meeting here,
真夜中に軍を進め、あわただしい会議を開いたのだ。
This only to consult how we may best
ここで謀るのは、ただ、どうすればもっとよく、
With what may be devis’d of honours new
新しい名誉に工夫をこらして、
Receive him coming to receive from us
↓
Knee-tribute yet unpaid, prostration vile,
まだ払ったことのない拝跪といやしい俯伏をわれらから受けようとしてやってくる
あの者を迎え得るかということだ。
Too much to one, but double how endur’d
一人でも重すぎるというのに、二倍になってはどうして堪えられようか、
To one and to his image now proclaim’d?
一者と、そしていま王と宣言されたその似姿に。
(P.L.ⅴ,Ⅱ.772-84)
なんだ、三跪九叩頭の礼よりましじゃん!
本書にてミルトンが『失楽園』中に述べたとしている、彼の主題
Not less but more Heroic then the wrauth
Of stern Achilles
猛きアキレスの怒りに劣るどころか、それよりもさらに英雄的である
(P.L.ⅸ,Ⅱ.14-5)
Not that faire field
Of Emma, where Proserpin gathering flours
花を摘むプロセルピン(プロセルピナ)が、
Her self a fairer Floure by gloomie Dis
みずからはさらに美しい花だったので、くらいディス(ディース・パテル)に
Was gatherd, which cost Ceres all that pain
摘み取られ、そのために、ケレスが身をすりへらしつつ
To seek her through the world.
世界中を探し回ることになった、あのうるわしいエナの野も及ばず。
(P.L.ⅳ,Ⅱ.268-72)
だから、ハデスさんは童貞こじらせただけで、神話にしては珍しく基本いい人だし、
後世の文学等でも比較的仲良く夫婦やってるだろ!いいかげんしろ!
大事なのはfaire,field,flours及びgathering,gloomie,gatherdと韻を踏んで、
非常に詩的な情景を演出していること。
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